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小熊英二「自分の人権に鈍感な者は、他人の人権にも鈍感である」

●2015/1/13  人権への意識 耐え忍ぶ美徳のワナ 小熊英二――朝日新聞デジタル

自分の人権に鈍感な者は、他人の人権にも鈍感である。ましてや、異邦人の人権に対してはなおさらだ。

日本社会に、アジアへの戦争責任意識が弱いのはなぜか。吉田裕はその一因として、「戦争受忍論」が根強いことを挙げている(「歴史への想像力が衰弱した社会で、歴史を問いつづける意味」世界1月号)。日本の民衆は、無謀な戦争で家族が死んでも、空襲で家が焼けても、「戦争だから仕方がない」と耐えていた。政府に抗議することも、アメリカを憎むこともない。評論家の清沢洌はこれを評して、「日本人の戦争観は、人道的な憤怒が起きないようになっている」と形容した。

こうした戦争観は、アジアの戦争被害への鈍感さにつながる。自分が黙って耐えているのだから、彼らも黙って耐えるべきだ、と考えるからだ。

日本の戦争被害者のなかには、「(朝鮮人の)慰安婦はずるい」と述べる人がいる。そうした言葉を発するのは、「日本人従軍慰安婦」であったり、引き揚げ時に強姦にあい中絶した旧満州居留民女性であったりする(有田芳生・北原みのり・山下英愛「私たちの社会は何を『憎悪』しているのか」世界11月号)。自分自身が声を上げられずに耐えてきた屈折が、声を上げる他者への憎悪につながるのだ。

こうしたことは、戦争責任の問題だけではない。外国人労働者の人権についても言えることである。

安田浩一「外国人『隷属』労働者」(G2第17号)は、ある縫製工場が、外国人技能実習生に課した「契約書」を紹介している。その内容は、無断外出・恋愛・妊娠・携帯電話購入などを禁じ、違反したら罰金徴収のうえ即時強制帰国させるというものだ。

こうした「契約書」が存在するのは、外国人技能実習生の法的地位のためでもある。技能実習制度では、3年間の契約期間中は雇い主を変えることが難しく、雇い主の立場が圧倒的に強い。アメリカ国務省の幹部は、「米国の基準であれば、あれは人身売買以外の何物でもない」と形容したという。

だがこうした人権無視の内規は、外国人が対象の場合だけだろうか。1954年の「近江絹糸争議」で、日本の女性工員たちが告発した紡績工場の内規は、これとあまり変わらない。

あるいは、一昨年に話題となった女性歌手の「丸刈り懺悔」はどうだろう。この事件は、所属するアイドルグループの「ルール」に反して恋愛をした歌手が、頭髪を刈って謝罪した映像がネット上で公開されたものだ。これは人権侵害ではないかという指摘が一部にあったが、そうした認識が日本社会全体に共有されたとは言い難い。

またあるいは、「ブラック企業」の内規はどうだろう。あるIT系企業では、新入社員研修で「会社ではすべてのルールは上司にある」という趣旨の「理念書」を大量に読ませ、長期拘束で疲労状態に追い込んだうえで、労働契約書を書かせているという(「ブラック研修の事例紹介」POSSE24号)。

こういう環境で働く人々は、外国人研修生の状況を知っても、「よくあること」としか考えないだろう。そこで黙って耐えている人々に、外国人労働者や「元慰安婦」の人権を守れと説いても、「ずるい」「なぜ外国人ばかり優遇するのか」と反応されかねない。

自分の人権が尊重された経験がない者は、他人の人権も尊重しない。日本の民衆自身が不当な状況に声を上げる経験を積まなければ、外国人の人権を尊重する機運は高まらないだろう。

日本は戦後70年を迎えた。労働環境、女性の地位、貧困と格差、歴史認識など課題は多い。だがそれらは、決して相互に無関係な問題ではない。共通して問われているのは、この70年で、日本社会にどれだけ人権意識が根付いたかに他ならないからだ。





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