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社会運動の可能性と絶望性――イノベーター理論を援用して考える

社会運動に可能性は残されているのか。ともすれば絶望してしまう現実があるが、マーケティングの分野でしばしば言及されるイノベーター理論を参考に、私たちが社会の在り方を変更できる可能性あるいは不可能性について考えてみたい。


1.イノベーター理論

社会学者のエベレット・M・ロジャースは、新しい製品やサービス(、その基盤となる考え方やライフスタイル)が世の中にどのように浸透していくかにかかり、新商品に対する購入の早さを基準に社会の構成員=消費者を5つのグループに分類している。

①イノベーター(革新者) 2.5%
新しいものを進んで採用する層。自分の価値観が社会の多数派のそれとは離れているため、社会全体への影響力は少ない。

②アーリーアダプター(初期採用者) 13.5%
社会と価値観を共有しているものの、流行には敏感で、自ら情報収集を行い判断する層。オピニオンリーダー。他の消費者に大きな影響力を発揮することがある。

③アーリーマジョリティ(前期追随者) 34.0%
新しいものの採用には比較的に慎重だが、全体の平均よりも早くに取り入れる層。ブリッジピープル。アーリーアダプターから影響を受け、新しい製品やサービスの市場全体への浸透を媒介する。

④レイトマジョリティ(後期追随者) 34.0%
新しいものの採用には懐疑的で、周囲の大多数が試している場面を見てから同じ選択をする層。フォロワーズ。

⑤ラガード(遅滞者) 16.0%
世の中の動きに関心が薄く、流行が一般化するまで採用しない、あるいは不採用を貫く層。伝統主義者。



2.普及率16%の論理

イノベーターが購買行動においてその商品の目新しさを重視するのに対して、アーリーアダプターはその商品が提供する新しい価値や実用性に着目する。そのため、アーリーアダプターは他の消費者に影響を与えるオピニオンリーダーとなり得る。イノベーターとアーリーアダプターは合わせても16%しかいないものの、この2者まで普及するかどうかがアーリーマジョリティ、そしてレイトマジョリティに広がるかどうか――つまり商品浸透と市場拡大の分岐点になることから、ロジャースはこれを「普及率16%の論理」と呼び、アーリーアダプターへのアプローチこそが重要だと唱えた。



3.キャズム理論

ロジャースの「普及率16%の論理」に対して、マーケティング・コンサルタントのジェフリー・A・ムーアはハイテク産業の分析から、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には容易に超えられない大きな溝があるとし、これをキャズムと呼んだ。また、イノベーターとアーリーアダプターで構成される市場を初期市場、アーリーマジョリティ以降の市場をメインストリーム市場と区分した。

ムーアによれば、初期市場からメインストリーム市場に移行するにはキャズムを超えなければならない。そのためにはアーリーアダプターを捉えるだけでは不十分であり、商品の普及段階に応じてマーケティングのアプローチを変える――つまりアーリーマジョリティに対するマーケティングも必要になる。



4.社会運動への援用

では、これまで議論してきたイノベーター理論を、社会運動や政治意識の分野に援用してみることにしたい。

まずはロジャースの唱えた消費者の類型を、無理矢理に市民の類型へと言い換えてみる。

  ・イノベーター(2.5%) → 市民運動家
  ・アーリーアダプター(13.5%) → 市民運動家のシンパサイザー
  ・アーリーマジョリティ(34.0%) → 革新的な市民
  ・レイトマジョリティ+ラガード(50.0%) → 保守的な市民

レイトマジョリティとラガードを合わせると50%になり、これが保守的な意識を持つ市民である。保守層というのは、原則的に多数派なのだと思う。だからこそ他の層がバラけてしまう限り、いつでも保守的な政権ができてしまうのだろう。もっともイノベーター理論によると、社会運動に際してレイトマジョリティやラガード――つまり保守的な市民に対してエネルギーを割く必要はない。

社会運動を起こす者はイノベーターだ。イノベーターの初期の目標は、その運動の影響力をアーリーアダプターまで広げることである。そうなれば、ひとまずは成功だと言える。例えば3.11後の反原発運動の盛り上がりは、イノベーターとアーリーアダプターを合わせた16%の支持を獲得できたからなのであろう。

そして、16%まで運動が広がったならば、次はアーリーマジョリティへのアプローチが必要となる。しかしアーリーマジョリティには、イノベーターやアーリーアダプターが持つ「運動界隈の常識」「運動家村の理論」は通用しない。そこには、容易に超えられない大きな溝=キャズムがあるわけだ。しかし、アーリーマジョリティからの支持が得られない限り、政権を獲得することはできないだろうし、社会システムを変更することも難しい。従って、この局面こそが社会運動にとっての正念場となる。個人的には、初期市場で展開された「高邁なイデオロギーに基づいて思考する者による運動」が「日々の暮らしの次元の中で思考する者のための運動」へと転換・発展されなければ、キャズムは超えられないのではないかと考える。

またキャズムの突破にかかり、運動方針や組織の在り方などをめぐって運動体の内部に亀裂が生じる可能性も高く、こうした内部抗争の修羅場も乗り切らなければならない。このとき、反対派と喧嘩別れするのではなく、反対派を批判勢力として内部に取り込めるのかがポイントになるような気がする。そうした亀裂を克服し、アーリーマジョリティの支持も得られたのであれば、合わせて50%の勢力となり、社会システムの変更は現実味を帯びてくる。そして、政策を具体的に実行していく中で、レイトマジョリティからも支持者が生まれてくるようになるかも知れない。




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